パート・アルバイトで働く人の中には、自身の年収と配偶者の扶養の範囲を意識している人も少なくありません。税金や社会保険の扶養の範囲に影響のある年収のライン、いわゆる「年収の壁」について、従業員に説明しておきましょう。
【所得税・住民税】
○100万円の壁 ▶ 住民税が課税
○103万円の壁 ▶ 所得税が課税
○150万円の壁・201万円の壁 ▶ 配偶者特別控除の額が段階的に縮小→0に
年収103万円以下であっても、給与所得以外に副業等の収入があると、一定の場合、一時所得や雑所得、譲渡所得となって、所得税が課税される「103万円の壁」等を超えてしまうことがあるので注意が必要です。
【社会保険】
○106万円の壁 ▶ 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用
○130万円の壁 ▶ 社会保険(国民年金・国民健康保険)の適用
政府は現在、「年収の壁」を意識せずに働ける環境整備に力を入れています。これからは、扶養の範囲内で働くよりも、世帯収入を増やす働き方を提案しても良いかもしれません。
生前贈与により財産をもらったときは、原則として贈与税の納税義務が生じます。その課税方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがあります。
暦年課税制度は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)に、所定の税率(10%~55%)をかけて贈与税額を計算します。同制度の利用には特段の要件・制限等はありません。
相続時精算課税制度は、1年間に贈与された財産の合計額を基に、一定の税率(20%)で贈与税を計算して「仮払い」し、相続発生後、贈与された財産を相続財産に加算した上で、相続税額から「仮払い」した贈与税の分を差し引く(精算する)制度です。同制度の利用には一定の要件等があり、同制度を選択した贈与については、暦年課税制度に戻すことができません。
財産の状況や家族構成、贈与期間等により、どちらの制度が有利であるかの判断は非常に難しく、慎重な検討が必要です。生前贈与をお考えの方は、早めに当事務所までご相談ください。
夏から秋にかけては台風シーズン。風水害や地震等により法人の資産が被害を受けたときの損害額や復旧費用、被災した従業員や取引先を支援したときの支出等の多くは、当期の費用や損失として損金とすることができます。災害時によくあるケースを確認してみましょう。
〇ケース1:被災した自社の従業員等へ災害見舞金品を支給した
〇ケース2:取引先等へ災害見舞金等を贈った
〇ケース3:被災地に自社製品等を贈った
〇ケース4:取引先等へ事業用資産を供与した
〇ケース5:取引先の売掛金等を免除した
ただし、被災した取引先等への支援であっても、場合によっては寄附金や交際費等に該当するものもあります。災害時の税務上の取扱いについて判断に迷われた際は、当事務所までご相談ください。
1年間の経営成績を表す損益計算書に対して、過去から現在に至るまでの経営努力の結果を示しているのが、貸借対照表です。財産や債務の内容、利益や損失の過去からの蓄積が表れている貸借対照表の「磨き上げ」をして、今から将来に備えておきましょう。
経営者が最高経営責任者として経営を担った後は、「次世代に事業承継する」「M&Aにより会社を譲渡する」「廃業する」等を選択することになります。ところが、金融機関からの借入金が多額であったり、貸借対照表が実態を表していなかったりした場合には、いずれの選択肢を選んだとしてもスムーズに進まない可能性があります。そのため、今のうちから貸借対照表の「磨き上げ」が必要なのです。自社の貸借対照表を、①不良債権②不良在庫③貸付金・仮払金等④投資等⑤借入金⑥隠れ債務(連帯保証を含む)の有無⑦自己資本――の観点からチェックしてみましょう。
融資審査にあたり、金融機関が重視するのは、主に①貸したお金は何に使われるのか?(資金使途)②貸したお金はきちんと返済されるのか?(返済能力)――の2つです。
金融機関からすれば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ、融資は難しくなります。そこで融資の申し込みにあたっては、「借りたお金は何に使うのか」「融資実行後、どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確で、かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
また、年1回の決算書に加え、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて、定期的に試算表も金融機関に提出するようにしましょう。積極的・定期的な情報開示は、金融機関との信頼関係をより深める「第一歩」です。
令和6年6月から「定額減税」が始まります。所得税の定額減税は、原則として、年末調整時の「一括控除」が認められておらず、月次での対応が必要になります。6月以降の給与計算事務をスムーズかつ適切に実施できるよう、次のことを準備しておきましょう。
(1)控除対象者の確認と減税額の確定
〇給与計算担当者は「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのか──を確定する必要があります。
(2)「各人別控除事績簿」の作成
〇各従業員の減税額が確定したら、氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表「各人別控除事績簿」を作成しておきましょう。
(3)給与等の明細書の様式の見直し
〇定額減税がスタートすると、各従業員の給与等の明細書に、当該給与等の所得税から控除した額を記載する必要があります。事前に明細書の様式を見直しておきましょう。
企業の賃上げを応援する税制として設けられた「賃上げ促進税制」。従業員に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)を前年度よりも一定割合増加させた場合に、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。
令和6年度税制改正により、適用期限が3年延長され、最大控除率もアップ。加えて中小企業については、赤字であった、もしくは大きな黒字ではなかったために税額控除をしきれなかった場合に、最長5年間、未控除額を繰り越せるようになりました。
同税制の適用を受ける前に、次のことを確認しておきましょう。
(1)ベースとなる前年度の雇用者給与等支給額を把握する
(2)直近の経営状況を踏まえ、①どの程度の賃上げが可能か②その際、何%の税額控除を受けられるか――を確認する
(3)賃上げの原資となる利益(限界利益)を確保する方法を検討する
令和6年度税制改正により、6月から納税者(合計所得金額1,805万円以下の給与所得者と個人事業主等)と、その配偶者を含む扶養親族1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税が行われます。
所得税については、6月1日以後最初の給与等の源泉徴収される所得税から減税額を控除。控除しきれない場合は、減税額に到達するまでそれ以後の給与等の支給時に順次控除する仕組みのため、給与計算の担当者は注意が必要です。
給与計算担当者は、従業員から提出された「扶養控除等申告書」「源泉徴収に係る申告書」を基に、減税額の計算対象となる配偶者や扶養親族を正しく把握する必要があります。これらの申告書から把握できない配偶者等については、年末調整で調整します。
手元により多くのキャッシュ(現金・預金)を残すことを重視する経営を「キャッシュ・フロー経営」といいます。資金の入りを「多く・早く」、資金の出を「少なく・遅く」することがポイントです。自社の仕入から販売、支払い、回収までのサイクルを次の指標で確認することが重要です。
○棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷純売上高×365
※原材料・商品を仕入れてから販売するまでの期間。
○売上債権回転期間(日)=売上債権÷純売上高×365
※製品・商品を販売してから代金を回収するまでの期間。
○買入債務(支払基準)回転期間(日)=買入債務÷仕入代金支払高×365
※原材料・商品を仕入れてから代金を支払うまでの期間。
○必要運転資金回転期間(日)=(棚卸資産回転期間+売上債権回転期間)-買入債務回転期間
※仕入代金を支払ってから販売した代金を回収するまでの期間。
「必要運転資金回転期間」は、資金調達が必要な期間です。この期間を短くすることで資金の心配が減り、安心の経営につながります。
個人事業者の消費税や所得税の確定申告の時期になりました。免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者は、今年から消費税の確定申告・納税も必要になります。その際、免税・課税事業者の期間を区分することが重要です。業種にかかわらず売上税額の一律2割を納税額とする特例措置(2割特例)を適用することも検討しましょう。
所得税の確定申告で注意しなければならないのは、家事費と家事関連費です。家事費は業務に関係のない生活(プライベート)のための支出で、必要経費として認められません。したがって、仕入代金・広告宣伝費・従業員給与など、業務上の必要経費と家事費とはしっかり区分しておく必要があります。
家事関連費は、必要経費と家事費が混在した支出です。例えば、店舗併用住宅の水道光熱費や家賃、火災保険料、業務と生活において利用する自動車の諸費用等が該当します。家事関連費については、使用時間や使用頻度などの合理的な方法によって按分し、業務上必要な部分を明確にすることで、その部分が必要経費として認められます。
インボイス制度の開始後、PDFをはじめとした電子データによる「電子インボイス」を受け取っている会社も多いことでしょう。電子インボイスの一種で、世界各国はもちろん、日本でも現在導入が進んでいる「ペポルインボイス」。その主な特徴は次のとおりです。
〇送信/受信側が同じシステムを利用していなくてもデータのやりとりが可能
〇発行者名・品名・取引金額等のインボイスの記載事項について、受信したシステムでその内容を正確に読み込めるため、請求書の確認・仕訳入力が楽になる
ペポルインボイスの送受信には、「ペポルサービスプロバイダー」に認定されている企業と契約を結ぶ必要があります。その点、TKCは、「ペポルサービスプロバイダー」に国内で初となるタイミングで認定されています。また、TKCのFXシリーズ・SXシリーズを利用している場合には、標準機能でペポルインボイスの送受信が可能です(送信機能は今後順次搭載予定)。
ペポルインボイスの利用を検討されている場合は、当事務所にご相談ください。
最低賃金が全国平均1,000円台に引き上げられる中、「年収の壁」は、従業員はもちろん、経営者にとっても大きな関心事の1つです。
所得税の課税対象となり、配偶者控除・扶養控除の対象外になる「103万円の壁」、国民年金・国民健康保険の加入対象となる「130万円の壁」。これらの「年収の壁」についてよく知り、個々人に合った働き方を選べるようになれば、従業員にとっては世帯年収のアップが、経営者にとっては人手不足解消が期待できます。
「年収の壁」にとらわれすぎない働き方を、従業員と一緒に検討してみましょう。
①「103万円の壁」
→所得税の課税対象になる
→配偶者控除・扶養控除の対象外になる
本人の年収が103万円を超えると、それを超えた分に所得税が課されるとともに、扶養者が配偶者控除を受けられなくなります。また、配偶者以外の扶養親族の給与収入が103万円(給与以外の所得がある場合は所得が48万円)を超えると、扶養者が扶養控除を受けられなくなります。一般的に、扶養者に かかる所得税・住民税が控除額の2割程度多くなります(参考:給与収入103万円=給与所得48万円)。
②「130万円の壁」
→国民年金・国民健康保険に加入する
年収130万円以上になると、会社の規模等にかかわらず従業員自身で国民年金・国民健康保険に加入する必要があります。
国民年金保険料等の支払いのため手取り収入が減少します。手取り収入を確保する目安は月収約14.5万円となります。
令和5年12月31日、電子帳簿保存法による電子取引データの保存についての「宥恕措置」が終了します。
現在は、電子メール等で送受信した請求書や見積書等の電子取引データ(PDF等)をプリントアウトして保存し、税務調査等で提示・提出できるようにしていれば問題ありませんが、令和6年1月1日からは紙による保存は認められず、電子データによる保存が義務付けられることとなります。原則として全ての法人・個人事業者が適用対象です。
この制度改正を大きな機会として、紙で受け取った書類も全てスキャンして電子で保存する体制へと大きく切り替え、「経営データの電子化」に社内全体で取り組みましょう。
TKCの自計化システム「FXシリーズ」の「証憑保存機能」を利用すれば、電子帳簿保存法の保存要件を満たして保存することができます。また、スマートフォンで紙の領収書等の証憑を撮影して、電子データとして保存することも簡単です。
令和5年10月1日のインボイス制度開始後、原則として、売手は買手からの求めに応じて、インボイスを発行しなければなりません。ただし、売手において課税資産の譲渡等(資産の引渡し、貸付け、役務の提供)が9月30日以前に行われた取引については、請求書等の発行日が10月1日以後であっても、現行の請求書(区分記載請求書)で問題はありません。
請求の締め日が20日など、月の末日でないケースでは、「9月分」と「10月分」に請求書を分けて発行するなどの対応が必要になります。
制度開始前からインボイスを発行しても問題はないので、準備ができた時点でインボイスに切り替えておくと良いでしょう。
受け取るインボイスの対応状況を確認しましょう
取引先から受け取る仕入インボイスについて、取引先の協力を得て、登録番号やインボイスの様式を確認しておきましょう。自社の経理処理に影響がある場合は、取引先と検討することも必要です。
インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入については、仕入税額控除ができなくなる分、消費税の納税額が増えることになります。ただし、経過措置として、令和11年9月30日までは一定の割合を仕入税額控除することが可能です。
免税事業者等である取引先に対して、適格請求書発行事業者への登録を要請する際、要請に応じないことを理由に、価格引き下げや取引中止を一方的に通告する、著しく低い価格を設定する――などの行為は、独占禁止法や下請法等に抵触するおそれがあります。
インボイス制度への対応はお済みでしょうか。制度開始を目前に控えたいま、自社がインボイスとして発行する請求書等に記載事項のモレがないかあらためて確認しましょう。
インボイス制度では、現在、使用している請求書等(区分記載請求書等)に、①登録番号(「T」+13桁の数字)②適用税率③税率ごとに区分した消費税額等――の記載が必要です。記載事項にモレがないかを確認しましょう。いわゆる「レシート類」の簡易インボイスには、上記①および②③のいずれかの記載が必要になります。
インボイスに記載する氏名・名称等は、屋号や省略した名称でも構いません。ただし、電話番号を記載するなど、インボイスを発行する事業者が特定できることが必要です。
なお、インボイスに記載する「税率ごとに区分した消費税額等」について生じる1円未満の端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)は、事業者の任意で決めて構いません。ただし、端数処理は1つのインボイスにつき、税率ごとに1回のみとされています。
経営者にとって、経営意思決定の大きな「拠りどころ」となるのが「変動損益計算書」です。変動損益計算書とは、売上高の増減で変化する費用を変動費に、売上高にかかわらず発生する費用を固定費に分類して表示した損益計算書のことです。通常の損益計算書に比べ、変動損益計算書は売上が変わった時のシミュレーションが簡単で、例えば「売上増に伴って新しく従業員を採用した場合、利益がいくら変わるのか?」といった経営上の判断をする時に役立ちます。
そして、変動損益計算書の大前提となるのが、正確な月次決算データです。そのためには、①適時・正確な記帳②証憑の整理や仕訳入力等を自社で行う「自計化」③請求書や経費精算の徹底管理――の3つのポイントを押さえましょう。月次決算を徹底し、変動損益計算書で自社の経営状態をタイムリーかつ正確に把握することで、問題点等に迅速に対応できるようになります。
インボイス制度では、適格請求書発行事業者が値引きや返品等を行ったときには、原則として返還インボイス(適格返還請求書)を発行する必要があります。そのため、代金決済の際に差し引かれた振込手数料相当額を売り手が「売上値引き」として処理する場合に事務負担が増えるとの懸念がありました。
令和5年度税制改正において、税込金額1万円未満の値引き・返品・割戻しなどの売上に係る対価の返還等については、返還インボイスの発行が免除されることになりました。一方、振込手数料相当額を支払手数料として処理する場合は、返還インボイスの発行免除の対象外の取引となるため、金融機関や取引先が発行する支払手数料に係るインボイスの保存が必要になります。ただし、課税売上高1億円以下など一定規模以下の事業者の税込金額1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例の対象になる場合は、インボイスの保存がなくても仕入税額控除を適用することが可能です。
現行の消費税法では、3万円未満の取引については帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例がありますが、インボイス制度開始後は、公共交通機関の運賃や自動販売機等での商品の販売など一部の取引を除いて、原則としてインボイスの保存が必要になるため注意が必要です。例えば、クレジットカードを利用した際には、店舗等が発行する「ご利用明細」や「ご利用控」を、コインパーキングを利用した際には、発行されるレシート(簡易インボイスに該当するもの)を必ず受け取って保存することを徹底しましょう。
なお、令和5年度税制改正では、一定規模以下の事業者について税込金額1万円未満の取引であれば帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例措置が設けられました(期間は令和11年9月30日まで)。
インボイス(適格請求書)を発行するには、適格請求書発行事業者の登録が必要です。制度が開始される令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として3月31日までの登録申請を行わなければなりません。しかし、令和5年度税制改正において、4月1日以後の申請であっても、10月1日を登録開始日として登録されることになるなど、柔軟に対応する方針が示されました。
ただし、「登録通知書」が届くまでには、e-Tax提出で約3週間、書面提出で約1か月半を要するとされています。登録申請の意思がある方は早めに申請し、対応準備を進めましょう。
なお、登録を受けると、登録番号や公表情報等が記載された「登録通知書」が送付されるとともに、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」にも掲載されます。
インボイス制度では、一定の事項が記載された帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存がなければ、原則として仕入税額控除を適用することができません。
自社が受け取るインボイスへの対応として、仕入先が適格請求書発行事業者であるかどうかの有無、インボイスの様式や受取方法(電子か紙)についての確認などが必要です。
また、公共交通機関の運賃や自動販売機での購入のように、売手からインボイスを受け取ることが困難な取引については、一定の条件のもと帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合があります。
インボイス制度では、書類の名称(請求書、納品書、領収書等)に関係なく、登録番号や適用税率、消費税額等などの一定の事項が記載されたものがインボイスになります。
事業者間取引を行う事業者の場合、通常は、請求書がインボイスになるでしょう。また、取引の都度、取引先に納品書を発行し、請求書は1か月分をまとめて発行するような場合には、納品書に一定の事項を記載することでインボイスにすることも可能です。どちらをインボイスにするかによって、消費税額の計上時期が異なります。
インボイスは、レシートや手書きの領収書でも構いません。小売業など不特定多数の者と取引する事業者は、インボイスに代えて、記載事項を簡易にした簡易インボイスを発行することも可能です。
インボイス制度が始まると、買手は売手から受け取ったインボイスと一定の事項を記載した帳簿書類の保存がないと、原則として仕入税額控除ができなくなります。
インボイスは、売手が買手(得意先)に、適用税率や消費税額等を正しく伝えるための手段となるもので、きちんと対応しないと得意先に迷惑をかけることになります。
インボイスを発行するには、適格請求書発行事業者の登録を受けなければなりません。買手が、仕入税額控除を必要としない消費者や免税事業者のみの場合は、インボイスを発行する必要がないため、あえて適格請求書発行事業者の登録をしないという選択肢が考えられます。
企業は、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)等の返済の本格化や、原材料・仕入価格(変動費)、燃料費・光熱費(固定費)などのコスト上昇という厳しい状況の中にあり、付加価値を増やす対策が必要となっています。
利益確保のための方策を検討して、アクションプランに落とし込み、資金計画を作成しましょう。このような収益力改善の取り組みに対して、国も「ポストコロナ持続的発展計画事業」(ポスコロ事業)などで支援しています。
ポスコロ事業は、経営改善に取り組む企業が、税理士などの認定支援機関の支援を受けて、資金計画、損益計画、アクションプラン等による早期経営改善計画を策定する場合に、費用の一部を国が補助する制度です。4月に制度が改正され、過去にこの制度を利用した企業でも、一定の場合は2回目の利用が可能になりました。
エネルギー・原材料価格の高騰、急速な円安などから原価の上昇を招いていますが、単に原価上昇分を反映させるだけの値上げは難しいと考えている人も多いのではありませんか。「価値」を高めて「価格」を上げるなど、「上手な値上げ」を考えてみましょう。
①値上げしやすい商品や取引先から値上げする。
②商品の機能・品質を基本形のみに絞った「基本形」の部分を値下げして、無償提供していた付属品やサービスなどをオプションとして有料化する。
③価格帯を増やす(例えば、2つの価格帯のある商材について、中間にもう1つ価格帯を設けるなど)。
④直販を増やして、粗利益の増加を図り実質的な値上げ効果を得る。
⑤独自化や差別化によって、高い価格で販売できるブランドをつくる。
役員と会社の関係は、同族会社やオーナー企業であっても、法律上は別人格です。役員と会社との間で、金銭や不動産の貸し借り、資産の売買などを行う際には、外部との取引と同様の手続きを踏まないと、会社法上や法人税法上の問題が生じるおそれがあります。
例えば、金銭や不動産の貸し借りを行うときは、「金銭消費貸借契約書」や「不動産賃貸契約書」を作成します。会社への損害を防止するため、取引の内容によっては株主総会や取締役会の承認決議を受けて、議事録を作成します。
役員が会社から受け取る、または支払う利息や家賃が適正でない場合に、法人税法上、役員給与とされる場合があるため注意が必要です。
役員給与は、会社法上、株主総会において総額を決議し、各役員の給与額は、取締役会や取締役間の協議等で決定します。
実際の支給にあたっては、1か月以下の一定期間ごとに同額で支給する定期同額給与であれば、全額損金算入が認められます。ただし、期首から3か月以内の改定など一定の場合を除いて、原則として、事業年度の途中での支給額改定は認められません。
役員賞与を支給したいときは、予め支給時期や支給額を決め、所定の期日までに税務署へ事前確定届出給与として届け出て、届出どおりに支給すれば損金算入が認められます。
オーナー企業の場合、経営者自らが自身の役員給与を決めることになりがちです。自分の会社という意識から主観的に決めるのではなく、前年実績、当期の利益計画や業績見込みなどを基礎に、経営の現状と1年以内に返済する借入元本額を含めたキャッシュ・フローを確認して、よく検討した上で給与額を決定しましょう。